はじめに
事業の課題を整理するとき、「5フォース分析とRFM分析は何が違うのか」「どちらを使えばよいのか」と迷うことがあります。どちらもビジネス分析で使われる手法ですが、見ている対象は同じではありません。
5フォース分析は業界の競争環境を、RFM分析は顧客の購買行動を整理するための手法です。この記事では、両者の違いを比較し、どのような課題で使い分ければよいかを初学者向けに解説します。
5フォース分析とRFM分析の違い
| 比較項目 | 5フォース分析 | RFM分析 |
|---|---|---|
| 主な分析対象 | 業界・競争環境 | 顧客・購買行動 |
| 主に使う情報 | 競合、新規参入、代替品、買い手、供給者など | 最終購買時点、購買頻度、購買金額 |
| 分かること | 業界でどの競争圧力が強いか | 顧客ごとの購買状況やグループの違い |
| 向く課題 | 市場参入、競争戦略、業界構造の把握 | 顧客分類、再購入促進、顧客施策の検討 |
最も大きな違いは、分析する対象です。5フォース分析は企業の外側にある業界構造を見ます。一方、RFM分析は自社が持つ顧客の取引履歴を使って、顧客の状態を見ます。
そのため、5フォース分析とRFM分析は優劣を比べる関係ではありません。解きたい課題に応じて使い分ける手法です。業界や競争環境を把握したいのにRFMだけを見る、顧客の購買行動を整理したいのに5フォースだけを見る、といった使い方では必要な答えを得にくくなります。
5フォース分析は業界の競争環境を見る
5フォース分析は、業界で働く競争要因を整理し、その業界の競争構造を理解するためのフレームワークです。自社と直接競合する企業だけを見るのではなく、新規参入や代替品、買い手、供給者も含めて競争環境を捉えます。
- 既存企業間の競争:現在の競合企業どうしの競争がどの程度強いか
- 新規参入の脅威:新しい企業が市場へ入りやすいか
- 代替品の脅威:別の商品やサービスへ置き換えられる可能性があるか
- 買い手の交渉力:顧客側が価格や条件へどの程度影響を与えられるか
- 供給者の交渉力:仕入先や供給者側が価格や条件へどの程度影響を与えられるか
例えば、新しい市場への参入を検討している場合、現在の競合だけでなく、新規参入のしやすさや代替サービスの存在も確認する必要があります。5フォース分析は、このように業界全体から競争圧力を整理したい場面で役立ちます。
市場規模、主要プレーヤー、事業モデルなどを含めて市場全体を把握したい場合は、市場分析の基本も前提知識として確認すると位置づけが分かりやすくなります。
RFM分析は顧客の購買行動を見る
RFM分析は、顧客の取引履歴をRecency、Frequency、Monetaryの3つの観点で整理する方法です。業界全体ではなく、自社の顧客がいつ、どの程度の頻度で、どの程度購入しているかを見ます。
- Recency(最終購買時点):最後の購入からどのくらい時間がたっているか
- Frequency(購買頻度):一定期間に何回購入しているか
- Monetary(購買金額):一定期間にどの程度購入しているか
3つの値を組み合わせると、最近購入した顧客、継続的に購入している顧客、長期間購入していない顧客などを分けて考えやすくなります。その結果を、顧客ごとの状況に合った施策を考えるための材料として利用できます。
ただし、RFMの区切り方や評価方法はすべての事業で同じではありません。「何日以内なら高Recency」「何回以上なら高Frequency」のような基準は、商品の購入周期や顧客数、分析目的などに合わせて決める必要があります。
どちらを使うかは分析対象から判断する
5フォース分析とRFM分析のどちらを使うか迷ったときは、最初に「何について判断したいのか」を決めます。業界や競争相手との関係を知りたいなら5フォース分析、顧客の購買状況を知りたいならRFM分析が候補になります。
- 新しい市場へ参入する前に競争環境を整理したい → 5フォース分析
- 競争が激しくなる要因を業界全体から確認したい → 5フォース分析
- 既存顧客を購買履歴からグループ分けしたい → RFM分析
- 最近購入していない顧客と継続購入している顧客を分けて見たい → RFM分析
フレームワーク名から選ぶのではなく、「業界を見るのか、顧客を見るのか」という分析対象から選ぶと判断しやすくなります。
5フォース分析とRFM分析を両方使う場合
事業全体を検討するときは、5フォース分析とRFM分析の両方を使うこともあります。ただし、同じデータを二つの方法で分析するわけではありません。それぞれ異なる問いへ答えるために使います。
例えば、まず5フォース分析で業界の競争環境を整理し、そのうえで自社の顧客データをRFM分析して顧客構成を確認する方法があります。前者では外部環境、後者では自社顧客を見るため、二つの結果を組み合わせることで事業を異なる角度から捉えられます。
ただし、分析結果だけで施策が自動的に決まるわけではありません。5フォース分析もRFM分析も、意思決定のための材料を整理する手段です。実際の判断では、事業目的、利用できるデータ、顧客特性、実施可能な施策なども合わせて検討します。
まとめ
5フォース分析とRFM分析は、どちらもビジネス分析に使われますが、分析対象が異なります。5フォース分析は業界の競争構造を整理し、RFM分析は顧客の購買履歴をRecency・Frequency・Monetaryの3つの観点で整理します。
業界や競争環境を知りたいなら5フォース分析、既存顧客の購買行動を整理したいならRFM分析と考えると使い分けやすくなります。必要に応じて両方を使う場合も、それぞれが答える問いを分けて分析することが重要です。