RAIDを組んでいてもデータは失われる
「RAIDを組んでいるのでバックアップは不要です。」
このような考え方を耳にすることがあります。しかし、RAIDを導入していてもデータを失う可能性はあります。実際、RAIDはディスク故障への対策として非常に有効ですが、あらゆるデータ消失を防ぐ仕組みではありません。
RAID構成のサーバーであっても、ファイルの誤削除やランサムウェア感染、災害などによってデータを失うことがあります。つまり、「RAIDを導入した=データは安全」というわけではありません。
では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。その理由は、RAIDとバックアップでは目的そのものが異なるためです。
この記事では、RAIDとバックアップの違いを整理しながら、それぞれがどのようなリスクに備える技術なのかを解説します。
RAIDとバックアップの違い
RAIDとバックアップの違いを一言で表すなら、次のようになります。
・RAID:システムを止まりにくくするための仕組み
・バックアップ:失われたデータを取り戻すための仕組み
RAIDは、ディスク故障が発生してもサービスを継続できるようにすることを目的としています。
一方でバックアップは、何らかの理由でデータを失った場合に復元できるようにすることを目的としています。
どちらもデータ保護に関係する技術ですが、守ろうとしている対象は同じではありません。
RAIDが得意なこと
RAIDが得意なのはディスク障害への対応です。
例えば、RAID1やRAID5などの構成では、ディスクが故障してもすぐにサービス停止へつながらない場合があります。これはRAIDが、データを複数のディスクへ分散または冗長化して保存しているためです。
そのためRAIDは、「サービス停止時間を短くしたい」「障害発生時も運用を継続したい」「ディスク交換中も利用を継続したい」といった要求に適しています。
つまりRAIDは、「故障しても動き続けること」を支援する技術です。一方で、失われたデータを取り戻すことは得意ではありません。
RAIDが苦手なこと
一方で、RAIDには対応できない障害もあります。
誤ってファイルを削除した
利用者が重要なファイルを削除した場合、その削除操作はRAIDを構成するディスクすべてに反映されます。RAIDは削除前の状態を保存しているわけではありません。
ランサムウェアに感染した
ファイルが暗号化された場合、その状態もRAID上のディスクへ保存されます。RAIDはディスク故障には強くても、データ内容の正しさまでは保証してくれません。
火災や水害などの災害が発生した
同じ場所に設置されたディスクでRAIDを構成している場合、災害によってすべてのディスクを同時に失う可能性があります。ディスクが複数あることと、保管場所が分散されていることは別の話です。
バックアップが必要になる理由
RAIDで対応できないこれらの問題に備えるために、バックアップがあります。バックアップの価値は、「過去の状態を残せること」です。
例えば、「昨日の状態に戻す」「削除したファイルを復元する」「感染前の状態へ戻す」「障害発生前のデータを取り戻す」といった対応が可能になります。
もしRAIDしか導入していなければ、ディスクが正常に動作していてもデータを取り戻せないケースがあります。逆にバックアップが存在すれば、システム停止や作業工数は発生するかもしれませんが、失われたデータを復元できる可能性があります。
バックアップの目的は、システムを動かし続けることではなく、失われたデータを復旧できるようにすることにあります。
RAIDとバックアップは競合しない
RAIDとバックアップは、どちらか一方を選ぶものではありません。RAIDは継続利用を支援し、バックアップは復旧を支援します。
例えば、
・ディスク故障に備える → RAID
・誤削除に備える → バックアップ
・ランサムウェアに備える → バックアップ
・サービス停止時間を短縮する → RAID
というように、両者は異なるリスクに対応しています。
そのため業務システムでは、RAIDとバックアップを組み合わせて運用することが一般的です。
重要なのは、「RAIDを導入したから安心」と考えることではありません。
システム設計では、発生しうるリスクを整理し、それぞれに適した対策を選択することが求められます。RAIDとバックアップは競合する技術ではなく、異なるリスクに備えるための補完関係にある技術と言えるでしょう。
まとめ
- RAIDはディスク故障への対策
- バックアップはデータ消失への対策
- RAIDはサービス継続を支援する
- バックアップはデータ復旧を支援する
- RAIDだけでは誤削除やランサムウェアには対応できない
- RAIDとバックアップは補完関係にある
RAIDは「止めないため」の技術、バックアップは「戻せるようにするため」の技術です。
システム設計では、どちらか一方を選ぶのではなく、どのリスクに備えるのかを考えた上で適切に組み合わせることが重要です。


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