はじめに
プログラムの処理が長くなると、文章やコードだけでは「どの順番で進むのか」「どの条件で分かれるのか」「どこへ戻って繰り返すのか」を追いにくくなります。そこで役立つのが、処理の流れを図形と線で表すフローチャートです。
フローチャートは、コードそのものを書くための記法ではなく、処理の順序や判断条件を整理するための図です。この記事では、基本記号の意味を確認したうえで、条件分岐と繰り返しを含む処理を、読みやすいフローチャートにする手順を解説します。
フローチャートとは
フローチャートで表す処理の前提となる順次・分岐・反復を先に整理したい場合は、制御構造の基本を確認してください。
重要なのは、コードの1行ずつを図に置き換えることではありません。「入力する」「条件を判定する」「結果を表示する」のように、読者が処理の役割を追える単位へまとめます。細かすぎる図はコードと同じくらい読みにくくなるため、処理の目的が分かる粒度を意識します。
フローチャートで使う基本記号
初めてフローチャートを書く場合は、まず次の基本記号を使い分けられれば十分です。
| 記号 | 主な役割 | 書く内容の例 |
|---|---|---|
| 開始・終了 | 処理の始まりと終わりを示す | 開始、終了 |
| 処理 | 計算、代入、更新などの処理を示す | 合計に金額を加える |
| 入出力(データ) | データの入力や結果の出力を示す | 点数を入力する、結果を表示する |
| 判断 | 条件を評価して進む経路を選ぶ | 点数は60点以上か |
| 流れ線 | 処理が進む方向を示す | 記号同士を矢印でつなぐ |
判断記号では、条件を評価した結果に応じて進む経路を分けます。「はい/いいえ」の2方向だけに限らず、規格上は複数の択一的な出口を持たせることもできます。ただし、出口が増えるほど読み取りにくくなるため、それぞれの流れ線がどの条件に対応するかを明記します。
フローチャートの作り方
1. 開始と終了を決める
最初に、どこから処理が始まり、どの状態になれば終わるのかを決めます。開始と終了が曖昧なまま途中の処理を書き始めると、分岐先や繰り返しの終了位置が分かりにくくなります。
2. 処理を大きな単位に分ける
次に、実行する内容を順番に並べます。例えば「点数を入力する」「合否を判定する」「結果を表示する」のように、何をする処理なのかが一目で分かる単位へまとめます。
3. 条件と分岐先を決める
処理が条件によって変わる場所には判断記号を置きます。判断記号の中には「点数は60点以上か」のように評価する条件を書き、流れ線の近くに「はい」「いいえ」など結果を示します。
4. 流れ線で順番をつなぐ
最後に、処理が実行される順番に記号を流れ線でつなぎます。分岐した経路が後で合流する場合や、繰り返しのため前の判断へ戻る場合も、矢印を追えば次の処理が分かるようにします。
条件分岐をフローチャートで表す
条件分岐では、判断記号を起点として条件ごとに流れ線を分けます。例えば「点数が60点以上なら合格、それ以外なら不合格」という処理では、判断記号に「点数は60点以上か」と書き、「はい」の経路を合格、「いいえ」の経路を不合格へつなぎます。
分岐が3つ以上ある場合も考え方は同じです。ただし、1つの判断記号から多くの線を出すと条件との対応が分かりにくくなることがあります。その場合は判断を段階的に分け、各記号で何を判定しているかを明確にした方が読みやすくなります。
繰り返しをフローチャートで表す
繰り返しでは、「続ける条件」と「終了する条件」を最初に決めます。単純なプログラムの流れを説明する場合は、判断記号で継続条件を確認し、繰り返す処理の後から判断へ戻る流れ線を引くと、どこを繰り返してどこで抜けるのかを追いやすくなります。
例えば「3人分の点数を順番に判定する」処理なら、人数を数える変数を1から始め、「3以下か」を判断します。条件を満たす間は点数の判定と表示を行い、人数を1増やして判断へ戻します。4になった時点で終了へ進みます。
なお、JIS X 0121:1986(ISO 5807:1985と一致)には、ループの始まりと終わりを一組で表す「ループ端」という記号も規定されています。フローチャートには繰り返し専用の表現もあるため、「繰り返しは必ず判断記号だけで表す」と考える必要はありません。この記事では、初学者が条件と戻り先を追いやすい基本例として、判断記号と流れ線を使います。

図1では、◇を判断、□を処理、▱を入出力として簡略表示しています。実際に作図するときは、開始・終了、処理、入出力、判断の各記号を使い分け、戻りの流れ線がどの判断へ接続するかを明確にします。
読みやすいフローチャートにするポイント
- 処理を細かく分けすぎず、役割が分かる単位でまとめる
- 判断条件は「何を判定するのか」が一意に分かる表現にする
- 分岐した流れ線には、条件の結果を明記する
- 繰り返しでは、戻り先と終了条件を明確にする
- 線の交差や長い折り返しを減らし、矢印を追いやすくする
フローチャートの目的は、記号を多く使うことではなく、処理の流れを読み取れる状態にすることです。図が複雑になった場合は、1枚へ詰め込むより、処理のまとまりごとに分ける方が全体像を理解しやすくなります。
まとめ
フローチャートを作るときは、まず開始と終了を決め、処理を役割ごとの単位へ分け、判断条件と分岐先を整理してから流れ線でつなぎます。条件分岐では判断結果ごとの経路を明示し、繰り返しでは継続条件、戻り先、終了位置を読み取れるようにすることが重要です。
基本記号を正しく使うことに加え、処理を細かく書き込みすぎず、矢印を追えば次の処理が分かる粒度に整えることで、プログラムを書く前の設計や既存処理の説明に使いやすいフローチャートになります。