はじめに
インターネットを使うと、家庭や会社のネットワークから遠く離れたWebサーバーまで通信できます。しかし、世界中の端末が1つの巨大なネットワークへ直接つながっているわけではありません。
インターネットは、それぞれ別の組織が運用する多数のネットワークを相互接続して成り立っています。この記事では、独立した複数のネットワークがどのようにつながり、経路情報を交換して世界規模の通信基盤を構成しているのかを解説します。
この記事で分かること
- インターネットが「ネットワークの集合」である意味
- ISPやASがインターネットの中で果たす役割
- ネットワーク同士が直接接続やIXPを通じてつながる仕組み
- BGPによってネットワーク間の到達可能性を伝える考え方
インターネットはネットワーク同士をつないだ仕組み
インターネットは、独立して運用される多数のIPネットワークを相互接続した世界規模の通信基盤です。家庭内LAN、企業ネットワーク、通信事業者のネットワーク、データセンターのネットワークなどが、それぞれの接続先を通じて他のネットワークへ到達できるようになっています。
重要なのは、世界中のネットワークを1つの組織が一括管理しているわけではないことです。それぞれの管理主体が自分のネットワークを運用し、他のネットワークと接続しながら全体としてインターネットを形成しています。現在のインターネットでデータを効率よく共有できる背景には、パケット交換方式を利用して通信回線を共有する仕組みがあります。
ISPが利用者のネットワークをインターネットへつなぐ
家庭や企業がインターネットへ接続するとき、一般にはISP(Internet Service Provider)などの通信事業者のネットワークを利用します。利用者側のネットワークはISPへ接続し、ISPのネットワークを経由してさらに別のネットワークへ到達します。
ISP自身も単独で世界中のすべてのネットワークへ直接つながっているわけではありません。他の通信事業者やコンテンツ事業者などのネットワークと接続し、それぞれが持つ経路を組み合わせることで広い範囲への到達性を実現しています。
ASは経路を管理する単位
インターネット上の経路制御では、AS(Autonomous System:自律システム)という単位が使われます。ASは、1つ以上のIPネットワークを、外部に対して一貫した経路制御方針で運用する単位です。
大規模なISPやクラウド事業者、コンテンツ事業者などは、自らのASを運用することがあります。一方、インターネットへ接続するすべての家庭や企業が独自のASを持つわけではありません。利用者側ネットワークはISPのASを通じて外部へ到達する場合があります。
ネットワーク同士はさまざまな方法で相互接続する
ASや事業者ネットワーク同士の接続方法は1つではありません。事業者同士が個別に直接つながる場合もあれば、IXP(Internet Exchange Point。IXとも呼ばれます)という共通の相互接続設備を利用する場合もあります。
IXPは、参加する複数のネットワークがIP通信を相互接続するための設備を提供します。ただし、インターネット上の通信が必ずIXPを通るわけではありません。接続関係や経路は、各ネットワークの接続先や運用方針によって異なります。
BGPでネットワーク間の到達可能性を伝える
ネットワーク同士を物理的に接続しただけでは、どの宛先へどの方向から到達できるのかは分かりません。AS間ではBGPを使い、自分のネットワークから到達できるIPアドレス範囲などの経路情報を交換します。
BGPはAS間のルーティングを担当するプロトコルです。交換した到達可能性情報と各ネットワークの運用方針をもとに、外部ネットワークへの経路を選びます。AS_PATHなどBGP固有の仕組みは、BGPとは?AS間で経路情報を交換する仕組みをわかりやすく解説で詳しく解説しています。
データは複数のネットワークをまたいで相手へ届く
たとえば家庭の端末から別事業者のネットワークにあるWebサーバーへ通信する場合、パケットは家庭内ネットワークからISPへ渡り、必要に応じて複数の事業者ネットワークを経由し、最終的にサーバー側のネットワークへ届きます。
各ルーターでは宛先IPアドレスと経路情報を使って次の転送先を決めます。アプリケーションのデータがTCP/IPの各層で処理され、ルーターを1ホップずつ進む具体的な流れは、TCP/IP通信の仕組みとは?送信から受信までの流れを分かりやすく解説で確認できます。
インターネットは固定された階層構造ではない
インターネットを「家庭→地域→国→世界」のような1本の階層で考えると、実際の接続関係を単純化しすぎます。ISP、クラウド事業者、コンテンツ事業者などは複数の相手と接続でき、直接接続とIXPを介した接続が組み合わされます。
そのため、インターネットは中心となる1台の装置や単一の管理者を持つ巨大LANではなく、独立したネットワークが多数の接続関係と経路制御によって協調する分散的な仕組みとして捉えると理解しやすくなります。
まとめ
インターネットは、それぞれ独立して運用される多数のネットワークが相互接続された世界規模の通信基盤です。家庭や企業はISPなどを通じて外部へ接続し、事業者ネットワークは直接接続やIXPなどを利用して他のネットワークとつながります。
経路制御ではASという単位が使われ、AS間ではBGPによって到達可能性情報が交換されます。こうした接続と経路制御が積み重なることで、利用者は複数のネットワークを意識せず遠くの通信相手へデータを届けられます。