DS170:時系列データの場合は、時間軸で訓練データとテストデータに分割する理由を理解している
データサイエンティスト検定(DS検定)のスキルチェックリストDS170では、時系列データの取り扱いが特に重視されます。通常のデータセットと異なり、時系列データは「順序」が重要な意味を持つため、訓練データとテストデータを単純に無作為に分割することはできません。
時系列データは、例えば売上や株価、気象データなど、時間の経過と共に変化する情報が含まれています。未来のデータを予測する際に、過去のデータに基づいてモデルを学習させ、そのモデルの精度を検証することが重要です。この記事では、時系列データ分析における効果的なデータ分割手法を詳しく解説します。
ホールドアウト法
ホールドアウト法は、データセットをトレーニングデータとテストデータに分け、モデルの性能を評価する最もシンプルな方法です。しかし、時系列データでは、データの順序が予測結果に直接影響を与えるため、無作為に分割すると、因果関係が崩れてしまいます。
そのため、過去のデータを訓練データとして、未来のデータをテストデータとして分割するのが一般的です。これにより、モデルの予測性能が実際の運用環境に近い形で評価でき、将来の予測精度を高めることができます。
メリット
- シンプルで計算コストが低い。
- 分割が容易で、適用が簡単。
デメリット
- テストデータが1つの未来しかないため、過学習やバイアスが発生するリスクがある。
- テストデータの割合に依存してモデル性能の評価が変動しやすい。
交差検証法
一般的な交差検証法は、データをランダムに分割して複数回のモデル評価を行いますが、時系列データには適していません。無作為にデータを分割すると、時系列データの重要な「順序」が壊れるためです。
その代わりに、時系列データに特化した交差検証法として、次の2つの手法がよく使われます。
ローリングウインドウ
ローリングウインドウ法は、訓練データの範囲を徐々にシフトさせながら、未来のデータを予測する手法です。具体的には、過去の一定期間のデータを使用して未来を予測し、その後、訓練データの範囲を少しずつ更新していきます。
例えば、以下のような段階的な予測を行います。
- 2019年までのデータで2020年を予測
- 2020年までのデータで2021年を予測
- 2021年までのデータで2022年を予測
この手法は、異なる時点でのモデルの性能を評価でき、過去のデータの影響を常に反映した予測を行うことが可能です。
メリット
- データの順序を守りつつ、複数の予測を行うことでモデルの安定性を確認できる。
- モデルの汎化性能を高めることができる。
デメリット
- 訓練データが常に一定期間に制限されるため、長期的なトレンドを捉えにくい。
- 訓練データのサイズが限られるため、モデルの精度に影響を与える可能性がある。
拡張ウインドウ
拡張ウインドウ法では、訓練データの範囲を徐々に広げながら予測を行う手法です。最初は限られた範囲の過去データで予測を行い、その後、訓練データを追加してより多くのデータを使って次の予測を行います。
例えば、
- 2019年までのデータで2020年を予測
- 2019年と2020年のデータで2021年を予測
- 2019年から2021年のデータで2022年を予測
この方法は、時間の経過とともにモデルがより多くのデータを学習でき、未来の予測精度が向上します。
メリット
- 訓練データが増えるため、より多くの情報を使ってモデルを訓練できる。
- 長期的なトレンドを捉えやすくなる。
デメリット
- データが増えることで、訓練時間が長くなる可能性がある。
- データの量が多くなると、モデルが過去の情報に引っ張られて古いパターンに適応しすぎるリスクがある。
まとめ
本記事では、時系列データの分析におけるトレーニングデータとテストデータの効果的な分割手法について解説しました。ホールドアウト法はシンプルで使いやすい一方、ローリングウインドウ法や拡張ウインドウ法を活用することで、より信頼性の高いモデル評価が可能です。
時系列データの特徴を理解し、適切な分割手法を選択することで、精度の高い予測モデルを構築することができます。次回のデータ分析でぜひこれらの手法を活用してみてください。
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