はじめに
逆行列について調べると、「公式は見たことがあるけれど、何のために使うのか分からない」「逆行列を使って連立方程式を解く流れがつながらない」と感じることがあります。
逆行列は、行列に対する「逆数」のような役割を持つ行列です。2×2行列なら公式を使って求めることができ、逆行列が存在する場合は、行列で表した連立方程式の解を求めるためにも利用できます。
この記事では、逆行列の意味を確認したうえで、2×2行列の逆行列を求める方法と、逆行列を使って連立方程式を解く手順を具体例で解説します。
この記事で分かること
- 逆行列がどのような行列か
- 2×2行列の逆行列を求める公式と計算手順
- 逆行列が存在しない条件
- 逆行列を使って連立方程式を解く方法
逆行列とは
逆行列とは、ある正方行列 A に掛けたときに、単位行列 I になる行列です。A の逆行列を A⁻¹ と表すと、次の関係が成り立ちます。
A × A⁻¹ = A⁻¹ × A = I
単位行列は、通常の数における「1」に近い役割を持つ行列です。2×2の単位行列は [[1, 0], [0, 1]] と表せます。
例えば、通常の数では 2 に 1/2 を掛けると 1 になります。これと似た考え方で、行列 A に A⁻¹ を掛けると単位行列 I になります。ただし、すべての行列に逆行列が存在するわけではありません。
行列そのものの表し方を先に確認したい場合は、ベクトルと行列の違いとは?表し方と役割をわかりやすく解説を先に読むと流れをつかみやすくなります。
2×2行列の逆行列の求め方
2×2行列の公式
2×2行列 A を [[a, b], [c, d]] とすると、逆行列 A⁻¹ は次の式で求められます。
A⁻¹ = 1 / (ad − bc) × [[d, −b], [−c, a]]
ここで ad − bc は行列式と呼ばれ、det(A) と表すこともあります。逆行列を求めるには、まず ad − bc を計算し、その値が0ではないことを確認します。
計算手順は次の3段階です。
- ad − bc を計算する
- a と d を入れ替え、b と c の符号を反転する
- 行列全体に 1 / (ad − bc) を掛ける
具体例で逆行列を求める
次の行列を例にします。
A = [[2, 1], [1, 1]]
まず、行列式 ad − bc を計算します。
2 × 1 − 1 × 1 = 1
0ではないため、この行列には逆行列が存在します。a と d を入れ替え、b と c の符号を反転すると、逆行列は次のようになります。
A⁻¹ = [[1, −1], [−1, 2]]
実際に A と A⁻¹ を掛けると単位行列 [[1, 0], [0, 1]] になるため、計算結果を確認できます。行列の掛け算そのものを確認したい場合は、行列の積とは?掛け算の計算方法と成立条件をわかりやすく解説を参照してください。
逆行列が存在しない条件
2×2行列では、ad − bc = 0 のとき逆行列は存在しません。逆行列の公式では 1 / (ad − bc) を使うため、行列式が0になると0で割ることになり、逆行列を定義できないためです。
例えば A = [[2, 4], [1, 2]] では、行列式は次のようになります。
2 × 2 − 4 × 1 = 0
したがって、この行列には逆行列がありません。
逆行列を使って連立方程式を解く場合も、最初に逆行列が存在するかを確認する必要があります。行列式が0のときは、逆行列を使う方法では解けません。
逆行列を使って連立方程式を解く方法
逆行列を使うと、係数行列に逆行列が存在する連立一次方程式を、行列の形にまとめて解くことができます。この場合、解は一意に定まります。例として、次の連立方程式を考えます。
2x + y = 5 x + y = 3
1. 連立方程式を AX = b の形にする
係数を行列 A、未知数を列ベクトル X、右辺を列ベクトル b とすると、次のように表せます。
A = [[2, 1], [1, 1]] X = [[x], [y]] b = [[5], [3]]
したがって、連立方程式全体は AX = b と表せます。
2. A の逆行列を求める
先ほど計算したとおり、A の逆行列は次のとおりです。
A⁻¹ = [[1, −1], [−1, 2]]
3. 両辺の左から A⁻¹ を掛ける
AX = b の両辺の左から A⁻¹ を掛けます。
A⁻¹AX = A⁻¹b
A⁻¹A = I なので、左辺は IX = X となります。そのため、
X = A⁻¹b
と変形できます。
実際に計算すると、
[[1, −1], [−1, 2]] × [[5], [3]] = [[2], [1]]
となるため、答えは x = 2、y = 1 です。元の連立方程式へ代入すると、2×2+1=5、2+1=3となり、どちらの式も満たすことを確認できます。
この方法のポイントは、「方程式の係数を行列としてまとめ、逆行列を掛けて未知数だけを残す」ことです。
3×3以上の逆行列は掃き出し法などで求める
3×3以上の行列でも逆行列を求めることはできますが、2×2のような簡単な形の公式だけで計算するのは複雑になります。一般には、単位行列を横に並べて行基本変形を行う掃き出し法(ガウス・ジョルダン法)などが使われます。
ただし、この記事の中心は2×2行列の逆行列と、逆行列を使った連立方程式の解き方です。3×3以上の具体的な計算手順は発展内容として分けて考えると、逆行列の基本を整理しやすくなります。
まとめ
逆行列は、行列 A に掛けたときに単位行列 I になる行列です。2×2行列 A = [[a, b], [c, d]] では、ad − bc が0でなければ、公式を使って逆行列を求められます。
連立方程式を AX = b と表せる場合、A の逆行列が存在すれば、両辺の左から A⁻¹ を掛けることで X = A⁻¹b と変形できます。2×2の逆行列を求めるときは、「行列式を計算する」「0でないことを確認する」「公式へ当てはめる」という順番で進めると整理しやすくなります。
逆行列の計算だけを覚えるのではなく、行列の積と組み合わせて「連立方程式の未知数を取り出すために使える」と理解すると、式の意味がつながります。