はじめに
回帰モデルの予測精度を確認するとき、RMSE・MAE・MAPE・決定係数(R²)など複数の評価指標が使われます。どれも「予測がどれくらい良いか」を見る指標ですが、測っているものは同じではありません。
RMSEとMAEは予測誤差の大きさ、MAPEは実測値に対する相対的な誤差、R²は平均値だけで予測する場合と比べてデータの変動をどの程度説明できているかを見る指標です。
この記事では、それぞれの意味と違いを整理し、どのようなときにどの指標を使えばよいかを初学者向けに解説します。
RMSE・MAE・MAPE・R²の違い
| 指標 | 主に見るもの | 値の見方 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| RMSE | 誤差の大きさ | 小さいほど良い | 大きな誤差を強く反映する |
| MAE | 誤差の大きさ | 小さいほど良い | 誤差を絶対値で平均する |
| MAPE | 実測値に対する相対誤差 | 小さいほど良い | 割合で解釈しやすいが、0付近に弱い |
| R² | 平均値予測を基準にした説明力 | 一般に大きいほど良い | 1が理想で、0や負値も取り得る |
RMSE・MAE・MAPEは「予測値と実測値がどれだけ離れているか」を別の方法で表す誤差指標です。一方、R²は誤差そのものの大きさではなく、平均値だけで予測する基準と比べた相対的な説明力を表します。そのため、R²だけで誤差の大きさを判断することはできません。
RMSEとは
RMSE(Root Mean Squared Error)は、各データの誤差を二乗し、その平均の平方根を取る指標です。日本語では二乗平均平方根誤差などと呼ばれます。
RMSE = √{(1/n) × Σ(実測値 − 予測値)²}
誤差を二乗してから平均するため、大きな誤差ほど値への影響が強くなります。たとえば、多くの予測が少しだけ外れていても、一部に非常に大きな予測誤差があるとRMSEは大きくなりやすくなります。
また、最後に平方根を取るため、RMSEの単位は目的変数と同じです。売上を円で予測しているならRMSEも円になり、誤差の大きさを元の尺度で確認できます。
MAEとは
MAE(Mean Absolute Error)は、各データの誤差の絶対値を求め、その平均を取る指標です。日本語では平均絶対誤差と呼ばれます。
MAE = (1/n) × Σ|実測値 − 予測値|
MAEでは誤差を二乗しないため、RMSEほど大きな誤差を強調しません。すべての誤差を絶対値として同じ考え方で足し合わせるので、「平均するとどのくらい外れているか」を把握しやすい指標です。
MAEも目的変数と同じ単位になります。RMSEとMAEを同じデータで計算すると、RMSEの方が大きな誤差の影響を受けやすいため、両者の差を見ることで一部の大きな誤差が目立っていないかを考える材料にもできます。
MAPEとは
MAPE(Mean Absolute Percentage Error)は、実測値に対して予測誤差がどのくらいの割合になるかを求め、その絶対値を平均する指標です。一般にパーセントで表します。
MAPE = (100/n) × Σ|(実測値 − 予測値) / 実測値|
たとえば実測値が100、予測値が90なら、そのデータの絶対パーセント誤差は10%です。単位ではなく割合で表すため、「平均して何%くらい外れているか」を説明したいときに分かりやすい指標です。
ただし、MAPEには重要な弱点があります。実測値が0なら分母が0になるため通常の式では定義できません。また、実測値が0に近いと、わずかな絶対誤差でも割合が非常に大きくなります。実測値に0や0付近の値が多いデータでは、MAPEだけでモデルを評価しない方が安全です。
決定係数(R²)とは
決定係数(R²)は、予測誤差の絶対的な大きさではなく、目的変数の平均値だけを使って予測する場合と比べて、モデルがどの程度うまく予測できているかを見る指標です。
R² = 1 − {予測残差の二乗和 / 平均値を基準にした偏差の二乗和}
R²は1が理想です。R²が0なら、一般的には目的変数の平均値を常に予測する基準モデルと同程度です。負の値になる場合もあり、そのときは平均値だけを予測する方法より悪い結果になっています。
そのため、「R²が0に近い=ランダムな予測と同じ」と考えるのは正確ではありません。また、R²が高くても実際の誤差が業務上許容できる大きさとは限らないため、RMSEやMAEなどの誤差指標と組み合わせて見ることが重要です。
RMSE・MAE・MAPE・R²の選び方
どの指標を使うかは、「何を良い予測と考えるか」で決めます。単純に1つの指標だけを選ぶのではなく、評価したい失敗の種類に合わせることが大切です。
- 大きな予測誤差を強く問題視したい:RMSEを使う
- 平均的にどのくらい外れるかを元の単位で見たい:MAEを使う
- 実測値に対して何%外れるかを示したい:MAPEを使う。ただし実測値0や0付近が多いデータには注意する
- 平均値だけで予測する場合に比べて、どれだけ説明できているかを見たい:R²を使う
実務では、たとえばMAEまたはRMSEで誤差の大きさを確認し、R²で基準モデルに対する説明力も確認するなど、複数の指標を併用することがあります。MAPEは割合で伝えやすい一方、データの値域によっては不安定になるため、データの性質を確認してから使います。
指標を比較するときは、同じテストデータに対する結果を比べることも重要です。評価するデータが違えば数値の条件も変わるため、指標だけを見てモデルの優劣を決めないようにします。
まとめ
RMSE・MAE・MAPE・R²は、どれも回帰モデルの評価に使われますが、測っているものが異なります。
- RMSEは大きな誤差を強く反映する
- MAEは平均的な絶対誤差を元の単位で把握しやすい
- MAPEは相対誤差を割合で表せるが、実測値0や0付近に弱い
- R²は平均値予測を基準にした説明力を表し、0や負値も取り得る
「どの数値が一番優れているか」ではなく、「どの種類の誤差や性能を重視したいか」を先に決めると、評価指標を選びやすくなります。回帰分析そのものの考え方を確認したい場合は、線形回帰とロジスティック回帰の違いとは?予測対象と使い分けを解説も参考にしてください。