はじめに
新しい施策や処置を行ったあとに結果が良くなっても、その変化が本当に処置によるものかは、処置を受けた人や対象だけを見ても判断しにくいことがあります。もともとの違いや時期の変化など、処置以外の要因も結果へ影響するためです。
そこで、処置を受ける処置群と、比較の基準となる対照群を設け、同じ指標で結果を比べます。この記事では、処置群と対照群の違いと、2つの群を比べることで処置の効果を評価しやすくなる理由を整理します。
処置群と対照群とは
処置群は、効果を確かめたい施策・治療・介入などを受けるグループです。英語の treatment group や intervention group に相当し、分野によっては実験群と呼ばれることもあります。
対照群は、処置群と結果を比べるための基準となるグループです。対照群は「何もしないグループ」とは限りません。研究や実験の目的に応じて、処置を受けない場合のほか、従来の方法、標準的な処置、プラセボなどを受ける場合があります。
処置群と対照群の違い
| 観点 | 処置群 | 対照群 |
|---|---|---|
| 役割 | 効果を確かめたい処置を受ける | 比較の基準になる |
| 受ける内容 | 新しい施策・治療・介入など | 処置なし、従来法、標準処置、プラセボなど |
| 比較するもの | 処置後の結果 | 同じ指標で観測した基準側の結果 |
| 目的 | 処置を受けたときの結果を確認する | 処置がない場合や別の条件との差を確認する |
重要なのは、処置群と対照群が「良い群と悪い群」に分かれるわけではないことです。2つの群は、処置という条件の違いと結果の違いを比べるために設定します。
なぜ対照群と比べると効果を評価しやすいのか
処置群だけを観測した場合、処置後に数値が変化しても、その変化が処置によるものか、時間の経過や季節、対象者の違いなどによるものかを区別しにくくなります。
対照群を同じ期間・同じ指標で観測すると、処置群だけで起きた変化なのか、処置を受けていない側でも起きた変化なのかを比較できます。例えば、処置群の平均値が10から15へ増えたとしても、対照群も10から14へ増えていれば、単純に「処置によって5増えた」と考えるのは適切ではありません。
このように、処置群と対照群の差を見ることで、処置を行った条件と行わなかった条件の違いを手掛かりに効果を評価します。ただし、群の作り方に偏りがあると、差のすべてを処置の効果とみなすことはできません。
具体例:Web施策の効果を比べる
ECサイトで新しいクーポン表示の効果を確かめる例を考えます。
対象ユーザーの一部には新しいクーポンを表示し、これを処置群とします。別のユーザーには従来どおりの画面を表示し、対照群とします。そして、同じ期間に両群の購入率を測定します。
処置群の購入率が12%、対照群が10%だった場合、観測された差は2ポイントです。この差は施策の効果を考える材料になります。ただし、処置群にもともと購入意欲の高いユーザーが多かったなど、群の背景が異なれば結果の解釈も変わります。
公平に比較するための基本
処置群と対照群を用意するだけで、処置の効果が自動的に分かるわけではありません。比較する条件をできるだけそろえることが重要です。
群の背景が偏りすぎないようにする
年齢、利用頻度、過去の成績など、結果へ影響する特徴が一方の群へ偏ると、その違いが処置の効果に見えることがあります。対象を無作為に割り当てる方法は、このような背景の偏りを小さくする代表的な考え方です。
無作為化・反復・局所管理化など、実験を設計する基本原則は「実験計画法の3原則とは?無作為化・反復・局所管理化を解説」で整理しています。
同じ指標・同じ期間で比べる
処置群は購入率、対照群は売上金額というように異なる指標を使うと、処置の有無による差を直接比べられません。観測期間についても、繁忙期と閑散期など条件が大きく異なる期間をそのまま比較しないようにします。
他の要因が混ざっていないか確認する
処置と結果の両方に関係する別の要因があると、単純な群間比較では処置の効果を正しく解釈できない場合があります。このような要因を交絡因子と呼びます。詳しくは「交絡因子とは?独立変数・従属変数との違いと因果関係を解説」で扱っています。
なお、2つの値に差や関係が見えるだけで因果関係が確定するわけではありません。相関と因果の違いは「因果関係と相関関係の違いとは?データ分析の基本を解説」を参照してください。
実験群・統制群・コントロール群との関係
分野によって呼び方は異なります。実験群は、処置や実験条件を与える側という意味で、処置群に近い用語として使われます。
統制群やコントロール群は、比較の基準になる群という意味で、対照群に近い用語として使われます。また、比較の基準となる群を広く比較群と呼ぶ場合もあります。
用語だけで「何を受ける群か」を決めつけず、実際の実験や研究で各群にどの条件が割り当てられているかを確認することが大切です。
まとめ
処置群は、効果を確かめたい処置を受けるグループです。対照群は、その結果を比較するための基準となるグループであり、処置なしだけでなく、従来法や標準処置などを受ける場合もあります。
2つの群を同じ指標・同じ期間で比較すると、処置を行った条件と行わなかった条件の違いを手掛かりに、処置の効果を評価しやすくなります。ただし、群の背景や他の要因が偏っていると単純な差をそのまま処置の効果とはみなせません。処置群と対照群は、条件をそろえて比較するための基本的な枠組みとして理解するとよいでしょう。