はじめに
「2つの出来事が独立している」と聞くと、単に別々に起こる出来事だと考えやすいかもしれません。しかし確率でいう独立は、出来事が別々に見えるかではなく、一方が起きたという情報によって他方の起こる確率が変わるかどうかで決まります。
独立事象とは、一方の事象が起きても、もう一方の事象が起きる確率に影響しない関係です。この記事では、独立事象の意味、式を使った見分け方、条件付き確率や排反との違いを、コインとサイコロの例で説明します。
この記事で分かること
- 独立事象が何を表すか
- 2つの事象が独立かどうかを式で見分ける方法
- 条件付き確率と独立の関係
- 独立と排反の違い
独立事象とは
独立事象とは、2つの事象A、Bについて、同時に起きる確率がそれぞれの確率の積で表せる関係です。式ではP(A∩B)=P(A)P(B)と表します。直感的には、一方が起きたことが分かっても、もう一方が起きる確率が変わらない関係と考えられます。
例えば、公平なコインを1回投げることと、公平な6面サイコロを1回振ることを考えます。コインで表が出たかどうかを知っても、サイコロで偶数が出る確率は1/2のままです。反対に、サイコロの結果を知っても、コインで表が出る確率は1/2のままです。このような関係を独立といいます。
確率を考えるための標本空間や事象の基本は、「確率とは?基本的な考え方と求め方をわかりやすく解説」で確認できます。
独立かどうかを式で見分ける
事象Aと事象Bが独立であるかは、次の式で判断できます。
P(A∩B) = P(A)P(B)
P(A∩B)は「AとBが同時に起きる確率」です。Aが起きる確率P(A)とBが起きる確率P(B)を掛けた値が、実際にAとBが同時に起きる確率と一致すれば、AとBは独立です。
この式は「独立だから何でも確率を掛ければよい」という意味ではありません。まず独立であることが分かっている場合に同時確率を積で求めたり、逆に同時確率と積を比較して独立かどうかを確認したりするために使います。
具体例で独立を確認する
公平なコイン1枚と公平な6面サイコロを同時に使い、Aを「コインで表が出る」、Bを「サイコロで偶数が出る」とします。
コインは表・裏の2通り、サイコロは1~6の6通りなので、組み合わせは全部で12通りあります。そのうちAとBが同時に起きるのは、「表と2」「表と4」「表と6」の3通りです。したがって、P(A∩B)=3/12=1/4となります。
一方、P(A)=1/2、P(B)=3/6=1/2なので、P(A)P(B)=1/2×1/2=1/4です。P(A∩B)とP(A)P(B)が一致するため、このAとBは独立です。
同じサイコロの出目からAを「偶数が出る」、Bを「4以上が出る」とすると、P(A)=1/2、P(B)=1/2ですが、両方を満たすのは4と6なのでP(A∩B)=2/6=1/3です。1/3は1/4と一致しないため、この2つの事象は独立ではありません。
条件付き確率と独立の関係
独立は、条件付き確率を使って考えることもできます。事象Bが起きたと分かってもAの確率が変わらないなら、P(A|B)=P(A)となります。ただし、P(B)>0であることが必要です。同様にP(A)>0なら、P(B|A)=P(B)とも表せます。
先ほどのコインとサイコロの例では、サイコロが偶数だったと分かっても、コインが表である確率は1/2のままです。一方、同じサイコロで「4以上が出た」と分かれば、偶数である確率は2/3となり、もとの1/2から変わります。この場合は独立ではありません。
条件が付いたときに確率をどのように考え直すかは、「条件付き確率とは?意味と求め方を具体例でわかりやすく解説」で詳しく扱っています。
独立と排反の違い
独立と混同しやすい言葉に排反があります。独立は「一方が起きても他方の確率が変わらない」という関係ですが、排反は「2つの事象が同時には起こらない」という関係です。
| 関係 | 意味 | 同時に起こるか |
|---|---|---|
| 独立 | 一方の発生が他方の確率に影響しない | 起こることがある |
| 排反 | 2つの事象が同時には起こらない | 起こらない |
例えば、1回のサイコロで「1が出る」と「2が出る」は同時に起こらないため排反です。しかし「1が出た」と分かれば「2が出る確率」は0になるので、確率は変化しています。どちらも確率が0でないこの例では、2つの事象は独立ではありません。
「同時に起こらないから互いに関係がない」と考えないことが重要です。独立かどうかは、見た目の関係ではなく、確率が変わるか、またはP(A∩B)=P(A)P(B)が成り立つかで判断します。
独立は二項分布の前提になる
独立という考え方は、同じ試行を繰り返す確率モデルでも使われます。例えば二項分布では、それぞれの試行が独立していることが基本条件の一つです。前の試行の結果によって次の試行の成功確率が変わる場合、単純な二項分布として扱うことはできません。
独立した試行と二項分布の関係は、「二項分布とは?試行回数が増えると正規分布に近づく理由を解説」で確認できます。
まとめ
独立事象とは、一方の事象が起きても、もう一方の事象が起きる確率が変わらない関係です。2つの事象A、BについてP(A∩B)=P(A)P(B)が成り立つかを確認すると、独立かどうかを判断できます。
条件付き確率では、P(B)>0のときP(A|B)=P(A)であれば、Bが起きたという情報がAの確率を変えていないと分かります。独立は「同時に起こらない」という排反とは異なるため、確率が変わるかどうかを基準に区別することが重要です。